アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、よくなったり、悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹を主とする疾患です。ご自身あるいはご家族が気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎を持っていることが多く、また、IgEというアレルギーに関する抗体を産生しやすいことが多いと言われています。 当院では飲み薬・塗り薬だけではなくバイオ製剤など最新の注射薬をもちいて、より治療の選択肢を広げます。また寛解後も、皮膚炎で起こった黒ずみやゴワゴワに対しての美容皮膚科での診療も行うことができます。ご相談ください。
アトピー性皮膚炎の特徴
症状のポイント
・かゆみのある湿疹 ・からだのさまざまな場所で左右対称にみられる ・悪くなったり良くなったりを繰り返す
湿疹の現れる場所
・顔面 ・口の周り ・上半身 ・手足 など
アトピー性皮膚炎の患者様の特徴
・気管支喘息 ・アレルギー性鼻炎 といったアレルギー体質の方が多い
肌で起きていること
アトピー性皮膚炎の方の肌状態
・皮膚のバリア機能が低下している ・アレルギーの原因物質(アレルゲン)が入り込みやすい ・かゆみを感じやすい 正常な皮膚は表皮の皮脂膜によるバリア機能でさまざまな刺激から守られています。アトピー性皮膚炎の皮膚は乾燥し、バリア機能が低下しているためアレルギーの原因物質(アレルゲン)や刺激が入り込みやすく、炎症が起こりやすくなっています。また、患者様の皮膚はかゆみに敏感になっているともいわれています。
アトピー性皮膚炎の原因
日常生活の様々な要因が、かゆみを悪化させる原因になり、何がかゆみを引き起こすかは患者様ごとに異なります。 皮膚の乾燥とバリアー機能低下、そこへ様々な刺激やアレルギー反応が加わってアトピー性皮膚炎は生じます。 また、夜、布団に入ってからかゆみが悪化する場合があります。 ・布団に入ってからだがあたたまること ・副交感神経が優位となりかゆみを感じやすくなる ・眠れないことがストレスになる ということが原因で、就寝前は特にかゆみが悪化しやすい時間帯です。
代表的な原因

アレルゲン
ダニ、ホコリ、花粉、ペットの毛など

皮膚への刺激
衣服、汗、髪、化粧品、シャンプーの接触や摩擦、お風呂の熱など

心理的要因
ストレス、不安など

遺伝的要因
家系調査や双生児研究から、アトピー性皮膚炎の遺伝率は約70〜80%と見積もられています。「生まれつきの皮膚バリアの弱さ+アレルギー体質になりやすい免疫の傾きが、いくつもの遺伝子の組み合わせで起こる」と考えられています。
かゆみの悪循環
悪循環の流れ
①かくと、皮膚に傷がつく
②症状が悪化すると、皮膚のバリア機能が低下
③バリア機能が低下すると、さらにかゆくなる
強くかいてしまうことで、湿疹や炎症が悪化し治りが遅くなります。しっかり治療し、この悪循環を避けることが大切です。アトピー性皮膚炎の治療方法

当院では、患者様の症状や重症度に合わせて、複数の治療選択肢をご用意しています。正しい治療、スキンケア、悪化因子の対策を行うことで症状がコントロールできた状態を目指します。
- 症状を悪化させる要因を避ける
- 保湿剤などでスキンケアを行う
- 炎症とかゆみを薬で改善させる
塗り薬(外用治療)

治療の基本
炎症を抑え、皮膚のバリア機能を整えるための治療です。
ステロイド外用薬
炎症を抑える強力な効果があり、症状の重さに応じて強さを使い分けます。
免疫抑制薬
タクロリムス(プロトピック®)
免疫の働きを抑える軟膏で、顔や首など皮膚の薄い部分にも使いやすい薬です。非ステロイド外用薬(新規製剤)
デルゴシチニブ(コレクチム®/JAK阻害薬)
: 炎症物質の働きを抑え、生後6か月以上の赤ちゃんから使用可能です。ジファミラスト(モイゼルト®/PDE4阻害薬)
生後3ヶ月の赤ちゃんから使用できる新しいタイプの軟膏です。保湿剤
スキンケアの基本として、皮膚のバリア機能を補い、乾燥や外部刺激から肌を守ります。
内服薬・注射薬(全身治療)

かゆみを軽減する
外用治療やスキンケアだけでは症状のコントロールが難しい中等症~重症の患者様には、全身に作用する治療法を検討します。
内服薬
抗ヒスタミン薬の内服は、かゆみのコントロールとして有用とされています。皮膚炎のかゆみにより睡眠が障害されたり、睡眠中にかき壊したりすることを防ぐ目的で、塗り薬の治療の補助的な立ち位置として処方されることが多いです。 中等症~重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに対しては免疫抑制剤のシクロスポリンが治療に用いられることもあります。
生物学的製剤・注射治療
デュピクセントⓇ(一般名:デュピルマブ)
ミチーガⓇ(一般名:ネモリズマブ)
アドトラーザⓇ(一般名:トラロキヌマブ)
イブグリースⓇ(一般名:レブリキズマブ)
これらの注射薬は、アトピー性皮膚炎の原因となる特定の物質(サイトカインなど)の働きを抑えることで、かゆみや皮疹を改善します。
日常の注意点
皮膚バリア機能を正常に保つためにエモリエント(保湿剤)で十分に保湿を行う
汗をかいたら、シャワーまたは濡れタオルでやさしく拭き取る
皮膚への刺激や痒みが生じづらい素材の服を選ぶ
髪の毛が肌に触れないように束ねる
ストレスをためず、規則正しい生活を送る
炎症を抑えると共に、スキンケアをきちんと行うことがアトピー性皮膚炎治療の大原則です。皮膚の清潔を保つため入浴、シャワーをし、刺激の少ない石鹸で洗い、その後保湿剤を塗ってください。 通常の治療を行ってもなかなか良くならないアトピー性皮膚炎の治療では、悪化因子を調べ、取り除くことも大切です。乳幼児では食物アレルゲン、それ以降ではダニ、ハウスダストなどが関係していることがあります。汗、乾燥や、皮膚に触れる様々な物質、ストレスなども悪化因子となり得ます。
よくあるご質問
アトピーは一生治りませんか?
完全に「治る」と言い切るのは難しいですが、治療により症状を抑えて安定した状態を維持することは可能です。
保湿剤だけでも効果はありますか?
軽症の場合は保湿だけで改善することもありますが、赤みやかゆみが生じている場合は外用薬の治療が必要です。
リスク・副作用について
・ステロイド外用薬は、使いすぎると皮膚がうすくなることがあります。 ・長期治療では、医師の指導のもとで適切に使うことが重要です。